4万人以上が参加するNFT系コミュニティ「Ninja DAO」。
次々とプロジェクトが立ち上がり、多数の人が交流するDAOを維持するうえで、欠かせないのがエンジニアの存在です。
Ninja DAOに参加するたくさんの優秀なエンジニアの中でも「ほんチい」をはじめとする数々のBotやツールを作成し「マッドエンジニア」「総理」と呼ばれ、信頼されているのが、むなかたさん(@munakata_Eng)です。
リアルイベントなどに参加することは少ないため、どんな人物なのかよくわからない方々も多いはず。そこで今回は、むなかたさんへのインタビューを決行。Ninja DAOに参加した経緯やほんチいBotの裏側などをたっぷり語ってもらいました!
- Ninja DAOに入ったきっかけとBotを作るようになった経緯
- 「ほんチいBot」の裏側
- 会社員を辞めるつもりはあるのか
- Web2、Web3エンジニアのこれから
むなかたさん(@munakata_Eng)
Ninja DAOのマッドエンジニア。DiscordのBotやツールを量産し“むなかた総理”とも呼ばれる。CNP Jobs(CNPJ)のエンジニアを務め、さまざまなプロジェクトからも声がかかる。保有するNFTの中で、お気に入りはチビ画伯さん(@Artist7yChibi)とあけじまさん(@akezima_d)の作品。
無名のWeb2エンジニアが、無料NFT目当てでNinja DAOへ
むなかたさんはNinja DAOで“総理”と呼ばれて有名なのに、検索しても全然情報が出てこないんですよね。いきなりですが、一体何者なんですか(笑)。就職してからずっとエンジニアですか?
(笑)。そうですね。高専でプログラミングを学んで、頭の中にあることを具現化できることがいいなと思ってエンジニアとして就職しました。それからもう数年ですね。
お、思っていたよりお若いんですね。Ninja DAOはいつごろ入ったんですか?
僕がNinja DAOに入ったのは2022年の1月中旬です。
もともとイケハヤさんのVoicyを聞いていて、NFTのことはなんとなく知っていたんです。でもその頃はガス代だけで数千円くらいかかる状況だったので“貴族の遊び”だと思って、自分で買うことはありませんでしたね。
そんなとき、イケハヤさんがVoicyでNinja DAOで「クリプトリテラシー検定」を作ったとアナウンスをされていたんです。しかも「合格したら検定のNFTをプレゼントします」と。それを聞いて「NFTがタダでもらえる!」と思って、NFT目当てでNinja DAOに参加しました(笑)。
え、ちょっと待ってください。つまりそれまでは完全にWeb2の知識しかなくて、プログラミング言語の「Solidity」とかWeb3でよく使われる技術は触ったことがなかったってことですか?
そうですね。
いやはや、びっくりですね。衝撃的な事実が発覚しましたよ。むなかたさんはもともとWeb3に詳しいんだと思い込んでいました。とすると、DiscordのBotはWeb2の技術なんですか?
はい、あれはWeb2の領域ですね。
Ninja DAOの守護神「ほんチい」Bot、誕生秘話
むなかたさんというと、「ほんチい」とかBotをよく作っているイメージがあるんですが、Botはいつごろから作るようになったんですか?
ほんチいとは
大海樹鈴さんのジェネラティブから誕生。「ほんチい」という言葉はDAO内で「欲しい」の意味や相づちなどで使われている。
Ninja DAOに参加してすぐ、次のバージョンのクリプトリテラシー検定をつくるために新しくチームが編成されることになったんです。なんか楽しそうだったので、そこに入って検定ページの制作に携わりました。
そこから徐々にDAOのメンバーと仲良くなって「こういうツール作れないか」って声をかけられることが増えて。それでツールを量産していった感じですね。
そっか、まずツール作りで知られるようになったんだ。たとえばどんなものを作ったんですか?
最初に作ったのはNinjaオーナーの投票ツールですね。イケハヤさんがVoicyで「投票ツールがほしい」と話されていたので、作ってみました。
そしたら今度は「チャット用のイケハヤBotがあったらいいな」という話がでて。ちょうどそのころ、DAO内で「ほんチい」というキャラクターがブームになっていたんです。それで「ほんチいを『イケハヤBot』にしちゃえばいいんじゃないか」と考えて、ほんチいBotを作りました。
「ほんチい」と打つと「ほんチい」とか「まだ東京で消耗してるの?」とか返すようにして、まぁ好きなようにやらせてもらいましたね(笑)。
ほんチいはイケハヤBotだったんですね!
そうしたら、うじゅうなさんが「ほんチいがNinja DAOを支配している」という内容でイラストを描いてくれたんです。「ほんチいBotを裏で操っているむなかたは“マッドエンジニア”だ」という話しになり。個人的にそれが気に入って、マッドエンジニアと名乗るようになりました。
「ほんチいBotヤバいけど、それを作ったむなかたさんはマッドだ」と。めちゃくちゃいいネーミングだと思いますよ!「総理」とも呼ばれてますよね。
「総理」と呼び始めたのはミャースさんです。2022年の3月くらいにいきなり言い始めて、それをイケハヤさんが拾ったという感じですね。
Botは今やコミュニティを盛り上げる必須ツール
ほんチいBotってどんなことができるんですか?
当初は「ほんチい」って言葉を返すだけだったんですが、今はいろんなことができますよ。たとえば占いとか「CNP」の売上報告ですね。あと、悪いユーザーが入ってきたときに自動でメッセージを削除するといったDAOの守護神的な立ち回りもしています。
DAO内で「こういう機能がほしい」という声があったら、その度に増やしていっています。
ほんチいって、DAOでしゃべっていると「ここでくるか!」っていうタイミングで突然出てくるんですよね。自動で応答するだけじゃなく、まるで本当に生きているかのように動くからすごいなって思います。
基本的には特定の言葉に反応して決まったワードを返しているんですが、実は発言者によって微妙に反応が違う仕様になっているんですよ。ある人には辛らつだったりします(笑)。
なんだそれ、面白いですね!
まぁ無益なんですけどね(笑)。
いやいや、めちゃくちゃ有益ですよ!今、コミュニティを活性化させるためにモデレーター(MOD)の存在が重要視されていますが、実はBotってすごい大事な盛り上げ役ですからね。
確かに、占い機能とか、ほんとにサッと作った機能でもみんなすごく盛り上がってくれるんですよね。コミュニティが大きいと、ちょっとしたことでもこんなに喜んでもらえるんだっていうのは、新しい気づきでした。
ほかのコミュニティは、ほんチいBotの存在をうらやましがっていると思いますよ。僕もコミュニティを持っていますが、今後大きくするならBotは必須だと考えています。
ほかから「Botを作ってくれないか」っていう依頼はありますね。一応、「これがあれば最低限Botは動く」というひな形は作ってあります。
あ、それぜひください(笑)。
「Web2.5で遊びたい」。エンジニアにとってDAOはアイディアの宝庫
むなかたさんは「Web2.5」のマッドエンジニアと名乗っていますが、そもそもWeb2.5ってなんですか?
あくまで僕のイメージですが、Web3は「Solidity」を使って、ブロックチェーン上で面白いことをすることです。ただ現時点ではブロックチェーンに書き込めることは限定されているうえに、失敗が許されない。それってかなり疲弊すると思うんです。
僕も今は「Solidity」は使えますが、Web3でやっていくより、Web3の技術であるブロックチェーンに刻まれた情報をもとに、Web2のツールをもっと使いやすくしたい。その領域で遊んでいきたいんです。
なるほど、それで2.5なんですね。むなかたさんのDAOでの動きを見ていると、確かに「遊んでる」って感じますね。
ちなみに「こういうものがほしい」って軽率に言ったら大体作れるんですか?
できると思います。セキュリティの高さや見かけの美しさを問わず、完成度7割くらいのものでよければですが。
すごいなぁ。ほんと魔法使いですね!
特定の情報を集めてきて表示するとか、情報同士を紐づけるとか、みなさんから要望されるものって大体、すでにやり方が確立されているものにプラスアルファすれば実現できるんですよ。
Webサイトのようにデザインを考えなくてもいいので、Discordはエンジニアが「遊ぶ」にはちょうどいいツールなのかもしれませんね。
そうなんです。DiscordのBotはちょっとした画像があってメッセージが表示できればいいので、取り組みやすいと思います。僕も実際に手を動かしてみて、「こんな使い方もあるんだ」ってたくさんの発見がありました。それもみなさんからの要望があったからこそ。DAOはアイディアの宝庫です。
「会社、辞めないんですか?」。DAOから相次ぐ声
今回、インタビューに先立ってDAOやTwitterでむなかたさんへの質問を募集したのでいくつか聞かせてください。
まずイケハヤさんから。「会社、辞めないんですか?」。
あれ、まだ会社員なんですか?フルタイムでエンジニアとして働きながら、空いている時間でDAOで遊んでいるってことですか?辞めないんですか?
辞められるなら辞めたいですね(笑)。でもWeb3の仕事はまだまだ安定しているとは言い難い。仕事として、エンジニアの単価感が確立していないんですよ。僕も正直、依頼をいただいても報酬をどのくらいに設定すればいいのかわかりません。
確かに!Botを一つ作ってもらう場合、どれくらいお支払いすればいいのか見当も付かないですね。ビジネスレベルではNFTはまだ盛り上がっていないんですか?
以前、会社で「NFTを絡めた技術はどうですか?」って提案してみたんです。でも全然でしたね。
そっかぁ、なかなか耳を傾けてもらえないんですね。でも今後クリエイターが稼げるようになっていくようになれば、それを支えるエンジニアも稼げるようになるはず。夢じゃないと思います。
むなかたさんのように、“魔法を使える人”が会社組織にがんじがらめにされているのはもったいない。DAOみんなで協力して自由の身にしてあげたいなぁ。
うじゅうなさんは「CNPJ」をやるときに会社を辞めて、自由の身になりましたよね。同じように「僕もプロジェクトを作ったらどうなるかな……」と、妄想することはありますね。
ちょうどその質問も来てました!「自分がファウンダーになるなら、どんなNFTをつくりたいですか?」。
僕が作ったツールを使えるようにする「パスポートNFT」はアリかなと思っています。ホルダーに無料機能を解放するという仕組みにすれるとか。
面白いですね〜。これまで表現してきたことをパッケージにすると。
ジェネラティブNFTをつくるとき、画像を重ね合わせるといった複雑な作業は既存のツールでは難しい部分があるんです。それを解決するような、ジェネラティブ制作の助けとなるようなツールはできると思います。でもこのあたりは実はすでに海外では事例があるんですよね。
日本は良くも悪くも海外から5年遅れているといわれているので、全然いけると思いますよ!
ミントサイトも自分で作る“魔法使い”でも、ミント日はバタバタ
むなかたさんでも、大変だなって思った瞬間はあるんですか?
最近ジェネラティブの開発に携わることが多いんですが、ミント日の前日と当日はバタバタしますね。ホワイトリストのアドレスが間違っていたとか、どのプロジェクトでも何かしらのトラブルがあるんです。
当たり前のようにミントサイトでミントしていましたが、お金が動く部分でもあるのでエンジニアは気を張っていたんですね。
やっぱり少しでもミスがあるとそのプロジェクトの価値が毀損されるので、影響は大きい。祈るような気持ちでやっています。
ミントサイトはツールの「Hash Lips」を使っているんですか?
初めてミントサイトを作ったときはHashLipsを使いました。でも見た目を丁寧に作り込もうとしたとき、HashLipsをカスタマイズするよい自分で作った方が早いと思ったので、2回目からは自分で構築しています。
HashLipsには優れているところがたくさんあるんですが、僕は自分で一から作りたいタイプなんですよね。
エンジニアって、そういうタイプが多いイメージあります。でもそれが実現できるのは、魔法使いだからこそですよ。
今までいろんなプロジェクトに関わってきましたが、それぞれジェネラティブの生成方法が違いました。だからそれらの知見を生かして、誰でも使えるようにパッケージ化すれば、独立への道はちょっとは開けるかもしれません。
いやいや、ちょっとどころか、大きく開けますよ!それが出来たら即、脱サラで。だって会社員エンジニアって夜中でも何かトラブルがあればたたき起こされるから大変じゃないですか?
いえ、僕はそれは対応していないんですよ。入社した当初は新卒魂で夜中でも対応したんですけど、結婚して子どもが生まれてからは断っています。仕事は仕事、家庭は家庭ですから。
ほんチいの通知がきたら夜中でもすぐ反応しちゃうんですけどね。
会社を辞めるための準備は万端ですね。
辞めさせられる流れがつくられている……(笑)。
サラリーマンを否定するつもりはないんですが、僕は会社を辞めてもやっていける力のある人は自由になって、その技術や知見を社会に浸透させることに意義があると思うんです。むなかたさんの実力はNinja DAOのみんなが認めています。だから本気で辞めるつもりなら、みんなバックアップしてくれると思いますよ。
それは心強いですね。
うじゅうなさんのエンジニアバージョン、見てみたいなぁ。
”Web 2”と”Web3”は面白いと感じる方を選べばいい
今後はどういった技術を突き詰めていきたいですか?
特定の技術を追い求めるよりも「その技術を使ってどんな面白いことができるか」という面に興味がありますね。ちょうど先日、「VLCNP」とラーメン店とのコラボ企画のために、店舗でホルダーであることを証明するためのツールを作ったんです。今後はこういうNFTとリアルとの連携をやっていきたいですね。
あとエンジニアの視聴者向けにお聞きしたいんですが、これからエンジニアはWeb3に来るべきなんでしょうか?
うーん、ある程度Web3の知識があれば強いとは思います。エンジニア目線でいうと、Web3はIDやパスワードがなくてもウォレットアドレスだけで保有者と紐づけられるという点が革新的。この部分はWeb2のサイトでもかなり活用できると思います。
ただ、Web3に取り組むかどうかは、その人が何を面白いと感じるか次第だと思っています。
僕は自分がツールやBotをつくることで誰かが喜んでくれることがうれしいし、モチベーションにつながっています。「Web3を生かしつつ、Web2を面白くしていく」というのが、僕のやり方。ここを突き詰めていきたいですね。
深いですね。最後に、むなかたさんにとってWeb3とは?
Web3は仕事や家庭以外の「サードプレイス」として最高の場所だと思います。新しい技術にワクワクする人たちで日々盛り上がっているので、この世界にまず一歩踏み出してみて、Web3を、ブロックチェーンの技術を、まずは楽しんでもらいたいですね。
ただ面白すぎて仕事や生活にいろいろ支障がでそうなので、そのあたりは注意が必要かも(笑)。
むなかたさんも支障が出ないように、体には気をつけてくださいね。ありがとうございました!